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仕事の価値観がわからないときに|3人の選択から考える、自分の判断軸

仕事の価値観を聞かれると、言葉に詰まる。成長、安定、自由、社会貢献。どれも大事そうだけれど、自分の答えとしてはしっくりこない。そんなときは、きれいな言葉を選ぶ前に、これまでの仕事で心が動いた場面を振り返ってみてください。

仕事の価値観は、最初から一つに決まっているとは限りません。「これは続けたい」「このやり方には納得できない」という経験を、選ぶための言葉にしていくこともできます。

この記事では、IKIGAI JAPANが公開した3人のインタビューを手掛かりに、自分の判断軸を整理する方法を考えます。3人に共通する成功法則を示すものではありません。それぞれの選択を、自分の経験を振り返るための材料として読んでください。

仕事の価値観は、職業名より「どう働きたいか」に表れる

たとえば、「Web制作をしたい」は仕事の種類です。「相手の困りごとを聞いてからつくりたい」は、その仕事に向き合う姿勢です。同じ仕事を選んでも、誰と、どのように進めたいかによって、求める働き方は変わります。

安定した収入を得たい。家族と過ごす時間を守りたい。自分で工夫できる余地が欲しい。誰かが次の一歩を選ぶ場面に関わりたい。こうした望みの間に、立派かどうかの順位をつける必要はありません。

ここでいう判断軸は、迷ったときに「今の自分は、何を優先するか」を考えるための基準です。すべてをかなえる理想の仕事を探す前に、何を守り、何なら調整できるかを分けてみましょう。

やりたい仕事そのものが浮かばないときは、「やりたいことがわからない人へ」の5つの問いも参考になります。ここからは、その先にある「仕事を選ぶ基準」に焦点を当てます。

3人の取材記録に見る、仕事の価値観

迫優華さん——誰のためにつくるのかを確かめる

株式会社zuanteの迫優華さんは、多くのWebサイトを制作する中で、会社名や業種だけが渡され、依頼者の目的が見えない仕事に疑問を抱いてきました。現在の取り組みでは、依頼者から直接話を聞き、公開後の更新や相談にも関わっています。

この歩みから考えたいのは、仕事の量や種類だけでなく、「相手との関わり方」も判断軸になり得るということです。制作が好きでも、相手の事情を聞く余地がなければ、納得しにくいことがある。同じ職種の中でも、仕事の進め方を確かめる必要があります。

迫優華さんのインタビューを読む

石井嵩大さん——生まれた時間を、誰に使いたいか

株式会社C.Cの石井嵩大さんは、AIやシステムを活用して、企業や経営者に「余白」を生み出す仕事をしています。公開インタビューでは、家族や仲間など、自分が大切にしているものへ時間を戻す考え方が語られています。

効率よく働くことを考えるとき、「どれだけ時間を減らせるか」に目が向きがちです。そこに「空いた時間を何に使いたいか」という問いを加えると、自分が守りたい生活が見えてくるかもしれません。

家族と過ごす時間でも、学ぶ時間でも、一人で落ち着く時間でも構いません。働き方の条件を、実際の暮らしにつなげて考えてみてください。

石井嵩大さんのインタビューを読む

丸石大仁さん——自分の挑戦が、誰かの選択肢につながる

株式会社Limoの丸石大仁さんの記録には、人と違う経験を選んできた歩みと、周囲の人へ関心が広がっていく過程が描かれています。現在は、採用支援やキャリア支援を通じて、企業、求職者、一緒に働く人の選択肢に関わっています。

ここから読み取れるのは、仕事の価値観が、経験や人との関係によって深まることもあるという視点です。以前は自分の成長を優先していた人が、今は誰かを支えることに手応えを感じる。その変化を、過去の自分との矛盾として扱う必要はありません。

丸石大仁さんのインタビューを読む

仕事の価値観を整理する4つの問い

3人の答えを、そのまま自分の答えにする必要はありません。紙やメモに、最近の出来事を三つ書いてみてください。「またやりたいと思った場面」「引っかかった場面」「誰かを見てうらやましかった場面」です。大きな成功や挫折でなくて構いません。

仕事の価値観を整理する4つの問い。出来事、反応、大切にしたいこと、次に確かめる行動の順に考える図解
仕事の価値観を整理する4つの問い。各ステップを以下で説明します。

次に、それぞれを四つに分けます。

  1. 何があったか。 評価を加えず、具体的な出来事を書く。
  2. 何に反応したか。 相手の反応、進め方、時間の使い方など、気になった部分を一つ選ぶ。
  3. 何を大切にしたかったか。 誠実さ、工夫する余地、生活の安定など、自分の言葉で置いてみる。
  4. 次に何を確かめるか。 実際の行動や、相手に聞ける質問へ変える。

たとえば、次のように整理できます。以下は取材対象者の発言ではなく、考え方を示すための架空の記入例です。

出来事反応したこと大切にしたいこと次に確かめること
顧客に話を聞いてから提案を直した相手の困りごとが分かり、納得して進められた理解してから提案すること次の案件で、最初に話を聞く時間を取れるか
急な依頼で約束の時間を変更した自分の予定を決められなかった生活の見通し急ぎの依頼の基準と、担当を相談できるか
同僚の説明で後輩が仕事を進められた人の前進を支える姿にひかれた誰かの理解を助けること自分も一つ、引き継ぎ資料を改善できるか

「自由が欲しい」で止めず、「仕事の順番を自分で決めたい」「夕方の予定を守りたい」と具体的にすると、何を確かめればよいかが分かりやすくなります。

大切なものが二つあるときは、最低限の条件を決める

成長したい。でも、生活も安定させたい。人の役に立ちたい。でも、自分の時間も必要。価値観を書き出すと、両立が難しそうな望みが出てくることがあります。

そのときは、一方を本音、もう一方を甘えと決めつけず、「最低限守りたい条件」と「今は調整できる条件」に分けてみてください。

たとえば、必要な収入や生活時間は守りながら、新しい役割を小さく引き受ける。すぐに異動や転職を決める前に、仕事の進め方を相談する。職種を変える以外にも、確かめられることはあります。

今の仕事で何が合っていないのかを整理したい場合は、仕事にやりがいを感じないときの3つの確認も合わせて読んでみてください。

自分だけで仕事の価値観を言葉にするのが難しい場合は、厚生労働省のjob tagの自己診断ツールにある「仕事価値観検査」も手掛かりになります。質問に答えて、自分が仕事で重視する傾向を確認できます。ただし、結果に表示される職業リストは、学歴や就業経験、資格などを考慮したものではありません。公式の利用上の注意も読み、選択肢を考える参考として使ってみてください。

仕事の価値観は、決め切るより小さく確かめる

書き出した判断軸は、今の時点での仮の答えです。立派な言葉になっているかより、次の選択に使えるかを確かめてみましょう。

今週の仕事で、変えられそうなことを一つ選ぶ。試した後で、「納得できたか」「負担はどうだったか」「続けたいか」を短く残す。思っていたほど大事ではなかったと分かったら、言葉を書き直して構いません。

仕事の価値観を見つけることは、自分を一つの言葉に閉じ込めることではありません。経験を振り返り、今の自分にとって大切なものを、次の選択へ持っていくことです。

まずは今日、「あの時間はよかった」「あの進め方は変えたい」と思った場面を一つ。その小さな記録から、自分の判断軸を育ててみてください。

IKIGAIコネクター
尾﨑弘師

WRITER PROFILE

尾﨑弘師 (おざき ひろし)

IKIGAIコネクター/IKIGAI JAPAN 主宰/株式会社ミトミト 代表取締役

これまで延べ1,500人以上に「生きがい(IKIGAI)」をヒアリングし、経営者を中心に100本以上の長編インタビュー記事を執筆。経営者インタビューメディア「IKIGAI JAPAN」を運営し、人生・価値観・哲学・仕事への想いを取材・言語化し、次世代へ残す活動を続けている。

掲げるのは、「その人の人生は、誰にもコピーできない。だからこそ、残すべき価値がある。」という考え方。AIによってコンテンツが大量生産できる時代だからこそ、その人にしかない経験や思想、技術、物語こそが差別化資産になると考えている。

さらに、発掘したIKIGAIをブランド・採用・集客・営業へつなげ、経済の力へ変える「IKIGAIマーケティング」を実践。インタビューによる価値の発掘・言語化を起点に、Webサイト・漫画LP・アニメーションなどのクリエイティブ制作から、広告運用・営業設計まで一気通貫で支援し、「その人だから選ばれる」マーケティングの仕組みを構築している。

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