仕事にやりがいを感じないとき、転職の前に確かめたい3つのズレ

仕事にやりがいを感じない時、すぐに「向いていない」「転職すべきだ」と結論づける必要はない。先に確かめたいのは、仕事の内容そのものではなく、三つのズレである。

一つ目は、自分の仕事と相手の変化がつながっているか。二つ目は、自分の判断や工夫を使えるか。三つ目は、職場で評価されるものと自分が大切にしたいものが合っているかである。

IKIGAI JAPANは、一人ひとりの人生と、その人が大切にしているIKIGAIを本人に直接聞き、インタビュー記事として記録している。IKIGAI JAPAN編集部が公開106人の記事を分析した結果(2026年9月)、仕事の意味は売上や肩書だけでは語られていなかった。家族、仲間、創造、健康、次世代など、その人が守りたい価値とのつながりが繰り返し現れている。

この記事では、106人の一次情報と仕事の意味に関する研究から、仕事にやりがいを感じない時に確かめたい三つのズレと、その確認方法を紹介する。

106人のIKIGAIから見えた、仕事より先にある価値観

公開106人の記事に編集部が付けた価値観タグでは、「家族」が25人、「子ども」が24人、「創造」が23人、「仲間・友」が21人、「健康・命」が20人であった。

この数値だけで、仕事の満足度との因果関係は示せない。一人に複数のタグが付き、掲載者にも偏りがある。それでも、仕事のやりがいが職種、収入、役職だけで完結せず、関係、創造、健康、次世代など、その人が守りたいものと結びついて語られることは多い。

取材で「現在は何をしているか」だけを聞けば、職業がその人のIKIGAIに見える。しかし人生を過去から聞くと、同じ仕事でも、顧客と直接話せるようになった時、自分の判断を使えるようになった時、家族や仲間との関係を守れるようになった時に、仕事の意味が変わっている場合がある。

だから、仕事にやりがいを感じない時は、「何の仕事へ転職するか」より先に、「今の仕事と何が切れているか」を見る必要がある。

仕事にやりがいを感じない時に見直す三つの接続

第一は、仕事と相手との接続である。自分の作業によって誰の何が変わったのかが見えると、仕事を単なる処理ではなく、人へ届く行為として捉えやすくなる。

第二は、仕事と自分の判断との接続である。自分の経験や工夫を使う余地があると、成果を自分の仕事として引き受けやすくなる。

第三は、仕事と価値観との接続である。職場で求められる成果と、自分が守りたい丁寧さ、信頼、創造、育成などが重なる時、仕事に納得を持ちやすくなる。

反対に、この三つが切れた状態では、能力を発揮して成果を出していても、仕事の意味を感じにくい。やりがいの問題を本人の気持ちだけにせず、顧客との距離、裁量、評価制度を含めて考える必要がある。

研究は仕事の意味をどう捉えているか

HackmanとOldhamによる1976年の研究は、七つの組織で62職種、658人を対象に、仕事の設計と内発的動機づけを検討した。これは古い研究だが、仕事特性モデルの原典であり、現在も仕事設計を考える基礎として参照されるため採用した。

仕事の意味を感じるうえでは、複数の技能を使えること、仕事をまとまりとして担えること、他者や社会への重要性が分かることが関係する。また、結果への責任には自律性、成果を知るにはフィードバックが重要だとする仕事特性モデルを示した。

MartelaとRiekkiが2018年に発表した研究では、フィンランド594人、インド342人、米国373人を対象に、仕事の意味と四つの心理的要因との関連を検討した。自分で選ぶ感覚である自律性、力を発揮する有能感、他者との関係性、誰かへ良い影響を与える感覚が、仕事を意味あるものとして評価することと関連していた。

これは三か国の横断データであり、四要因が仕事の意味を生み出す因果関係を証明した研究ではない。それでも、自分の内面だけを掘り続けるのではなく、関係、裁量、役割の設計も点検するというIKIGAI JAPANの整理を補足している。

仕事にやりがいを感じない原因になる三つのズレ

1.自分の仕事が、誰に届くか分からない

作業量や納期だけを見ていると、自分の仕事によって誰の何が変わったのか分からなくなる。成果が見えない状態が続けば、仕事は人の役に立つ行為ではなく、処理するだけの作業になりやすい。

まず、仕事の受取人を一人まで具体化する。顧客の声を読む、利用現場を見る、営業担当に依頼の目的を聞く、納品後の変化を確かめる。相手との距離が少し縮まるだけで、同じ作業の意味が変わることがある。

働く意味が分からない、誰のために仕事をしているのか見えないと感じる方は、月50件を超えるWeb制作を行いながら、依頼主と直接話せないことに疑問を持った迫優華さんのインタビューを補足として読んでほしい。Web制作という職種の問題ではなく、仕事と相手の変化が切れていたことを考えられる記事である。

2.自分の判断や工夫を使えない

決められた手順を守ることは必要である。しかし、理由を知らされず、改善を提案できず、自分の経験や感覚を使う余地がなければ、仕事への当事者意識は薄くなる。

能力が足りないのではなく、能力を使う場面が少ない可能性もある。小さな改善案を一つ出す、手順の理由を聞く、品質基準を言葉にする。任された範囲で判断を増やせないか確かめるのである。

自分の専門性が何を守っているのか考えたい方は、ソフトウェア品質保証を「最後の砦」と捉える清水大輔さんのインタビューが参考になる。仕様どおりかだけでなく、利用者が迷わないかを人の感覚で確かめる仕事が、利用者の安心と開発者の時間へどうつながるかを読める。

3.職場の評価と、自分の価値観が合わない

売上、速さ、件数だけが評価される職場で、相手の納得や長期的な信頼を大切にしたい人が働けば、成果を出しても空しさが残ることがある。

自分が誇らしかった仕事を三つ思い出し、何を守れた時に納得できたかを書く。速さ、正確さ、感謝、創造、育成、安心。そこに、自分が仕事で守りたい価値が現れる。次に、職場の評価基準と並べ、重なる部分と重ならない部分を確かめる。

自分の楽しさと相手への思いやりを両立したい方は、「おもろい」と「思いやり」を合わせた「おもろやり」を大切にする中根義将さんのインタビューを読んでほしい。売りたい商品を押すのではなく、相手が望む未来に合う提案を「正しい仕事」と考える記事である。

転職の前に行いたい三つの確認

IKIGAIの取材を続けて感じるのは、「やりがいがあるか」と大きく尋ねるより、相手、判断、価値観へ分けた方が、変えられるものを見つけやすいということである。次の順番で、実際の仕事を一つずつ振り返ってほしい。

  1. 相手との接続を確かめる。「この仕事で、誰の何が変わるのか」と書き、今週中に顧客や利用者の声を一件だけ確認する。
  2. 判断の余地を確かめる。「自分の工夫を使える場面はどこか」と書き、小さな改善案を一つ提案する。
  3. 評価と価値観を確かめる。「何を守れた仕事を誇りに思うか」と書き、上司が期待する成果との共通点と相違点を確認する。

仕事にやりがいを感じない時、三つの確認で何が変わるのか

三つに分けることで、「仕事が嫌だ」という一つの結論から、具体的に確かめられる問題へ変えられる。

相手の反応が見えれば意味を感じられるなら、顧客との接点を増やすことで改善できる可能性がある。判断を使えないことが原因なら、担当範囲や進め方の相談が必要になる。価値観と評価が大きく異なるなら、異動先や転職先を選ぶ基準ができる。

二週間から一か月試し、「やりがいが戻ったか」だけで判断しない。相手が見えたか、自分で判断できたか、納得できる価値を守れたかを記録する。小さな変化を観察することで、今の職場で調整できるのか、環境そのものを変える必要があるのかを判断しやすくなる。

三つの確認を使う時の注意点

第一に、やりがいの不足を自分の努力不足だけで説明しないことである。裁量や情報が与えられない職場で、本人だけが気持ちを変えようとしても限界がある。

第二に、一度の改善で結論を出さないことである。相談した内容、試した行動、相手の反応を記録し、一定の期間を置いて判断する。

第三に、心身の安全を優先することである。ハラスメント、長時間労働、安全を損なう状況、強い心身の不調がある場合は、やりがい探しより先に職場外の相談窓口や医療機関へつながるべきである。

それでもズレが縮まらず、相談しても役割や環境を変えられないなら、異動や転職を検討する理由になる。その際は仕事内容だけでなく、顧客との距離、裁量の範囲、評価される行動を確認する必要がある。

やりがいは、仕事の名前ではなく接続から生まれる

仕事にやりがいを感じない時、職種を変えることだけが解決ではない。同じ職種でも、相手が見え、判断を使え、自分の価値観と成果がつながれば、仕事の意味は変わる。

反対に、高収入や人気の職種でも、その三つが切れていれば空しさは残る。まず、自分の時間が誰の何につながっているかを一つ確かめる。その接続を増やせない環境なら、次の場所を選ぶ基準ができる。

IKIGAIは、仕事に自分を合わせ続けることではない。自分が大切にしたいものと、日々の行動がつながっている状態である。

IKIGAIコネクター

尾﨑弘師

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調査・集計方法

本記事の「公開106人」は、2026年9月時点でIKIGAI JAPANに公開されているインタビューを対象としている。数値は、各記事へ編集部が付与した複数選択タグと本人の発言をもとにした単純集計である。掲載者は経営者・専門家が中心であり、日本人全体や働く人全体の傾向を示す統計ではない。

WRITER PROFILE

尾﨑弘師 (おざき ひろし)

IKIGAIコネクター/IKIGAI JAPAN 主宰/株式会社ミトミト 代表取締役

これまで延べ1,500人以上に「生きがい(IKIGAI)」をヒアリングし、経営者を中心に100本以上の長編インタビュー記事を執筆。経営者インタビューメディア「IKIGAI JAPAN」を運営し、人生・価値観・哲学・仕事への想いを取材・言語化し、次世代へ残す活動を続けている。

掲げるのは、「その人の人生は、誰にもコピーできない。だからこそ、残すべき価値がある。」という考え方。AIによってコンテンツが大量生産できる時代だからこそ、その人にしかない経験や思想、技術、物語こそが差別化資産になると考えている。

さらに、発掘したIKIGAIをブランド・採用・集客・営業へつなげ、経済の力へ変える「IKIGAIマーケティング」を実践。インタビューによる価値の発掘・言語化を起点に、Webサイト・漫画LP・アニメーションなどのクリエイティブ制作から、広告運用・営業設計まで一気通貫で支援し、「その人だから選ばれる」マーケティングの仕組みを構築している。

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