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「楽しむ」に責任を持つ。株式会社ミトミト取締役・岩橋綾士が選び続ける、自分らしい生き方
岩橋綾士 株式会社ミトミト
IKIGAIの芽|取材・執筆:藤瀬亮介
株式会社ミトミト 取締役
岩橋綾士 株式会社ミトミトさんのプロフィール
岩橋綾士 株式会社ミトミト
株式会社ミトミト 取締役
「あなたにとって、IKIGAIとは何か」
インタビューの最後、株式会社ミトミト取締役の岩橋綾士さんにそう尋ねた。
返ってきた答えは、とてもシンプルなものだった。
「楽しみ、楽しさですね」
振り返ってみると、この日のインタビューでは、何度も「楽しい」という言葉が登場した。
幼少期の話でも、サッカーの話でも、仕事の話でも、起業について聞いたときもそうだった。
現在も仕事の合間を縫って週に2、3回ほどサッカーを続けている理由を聞けば、「楽しいからですね」と答える。
なぜ自分で事業を始める道を選んだのかを聞いても、「もっと楽しい働き方をしたい」という言葉が返ってくる。
一見すると、岩橋さんは「楽しいことを選び続けてきた人」に見えるかもしれない。
しかし、話を聞き続けるうちに、岩橋さんの言う「楽しむ」は、単に好きなことだけをして生きるという意味ではないことが分かってきた。
その根底にあるのは、自分で選択すること。
そして、自分が選んだことに責任を持つことである。
岩橋さんは、なぜこれほどまでに「楽しむこと」を大切にしているのだろうか。
その価値観の原点をたどると、幼少期の経験や家族との関わり、そして大学時代から積み重ねてきた仕事の経験が見えてきた。
第1章|「楽しむなら、自分で責任を取る」
岩橋さんは、幼少期からよく遊ぶ子どもだったという。
小学校、中学校と友人たちとたくさん遊び、その中では周囲に迷惑をかけてしまったこともあった。
それでも、「楽しむこと」自体を否定されたわけではなかった。
むしろ、両親から伝えられていたのは、その楽しさにどう向き合うかという考え方だった。
「親から、楽しむのも大事だけど、何にでも挑戦するのも自分の責任でやれば、と常々言われていたので」
やりたいことをやる。
挑戦したいことに挑戦する。
その代わり、何かが起きたときにすべて親へ頼るのではなく、自分で責任を持つ。
「親に依存するのは違うなと思っていた」
岩橋さんはそう振り返る。
現在の岩橋さんが大切にしている「楽しむ」という価値観には、幼いころから「責任」という考え方が重なっていた。
その姿勢は、スポーツを選ぶ場面にも表れている。
岩橋さんが長く続けてきたのはサッカーである。
きっかけは、兄がサッカーをしていたことだった。
実は、岩橋さん自身が最初にやりたかったのは野球だったという。
それでも、野球を選ばなかった。
兄がすでにサッカーをしている。
自分だけ別のスポーツを始めれば、家族は別々の会場へ送迎しなければならない。
「僕だけ野球の会場で一人違うスポーツをしていたら、大変になるよねと」
子どもながらに、家族の負担まで考えていた。
また、スポーツ選手を将来の仕事にすることにも、早い段階から現実的な視点を持っていた。
プロになった後のセカンドキャリアについても考え、自分はスポーツ選手を目指すわけではないと考えていたという。
そのうえで、サッカーを楽しんだ。
そして、そのサッカーは現在も続いている。
会社を経営するようになった今も、週に2、3回ほどプレーすることがあるそうだ。
理由は変わらない。
「楽しいから」
幼少期から現在まで続いている「楽しむ」という感覚。
一方で、年齢を重ねるにつれて、その言葉に対する考え方も深まっていった。
ただ自分が楽しいことをするだけではない。
周囲への影響を考え、自分の選択に責任を持つ。
現在の岩橋さんにつながる「楽しむ」の土台は、すでにこのころから形づくられていたのである。
第2章|「もっと楽しい働き方をしたい」
岩橋さんが将来の働き方について考えるうえで、一つの原体験になったのが、身近な大人たちの姿だった。
会社員として働いていた父親が、仕事から帰ってきたときに機嫌が悪いことがあった。
また、周囲の会社員を見ても、「働くことは楽しそうだ」というイメージをあまり持てなかったという。
そこで岩橋さんの中に、一つの思いが生まれた。
「それだったら、僕は楽しい生き方を選びたいなと思ったところがあります」
これは、会社員という働き方そのものを否定する考えではない。
岩橋さん自身も、
「別に会社が楽しくないというわけじゃない」
と話している。
岩橋さんが求めたのは、職業の形よりも「自分で選択できること」だった。
「より自分で選択してやる人生のほうが楽しいよねっていう定義づけをしてるからやってる」
誰かに決められた道だから進むのではなく、自分が選んだ道を歩きたい。
その考えが、岩橋さんを事業の世界へ向かわせた。
大学時代にはベンチャー企業で働き、仕事の経験を積んでいった。
当時は長時間働くこともあったという。
それでも仕事に向き合い、売上を伸ばす経験を積み、会社から表彰されたこともあった。
また、仕事をするうえで身についた習慣がある。
それは、「分からないことを、そのままにしないこと」だ。
前職では、
「調べて分かることは自分で調べる」
と繰り返し言われていたという。
用語や知識など、答えを調べれば分かるものは、まず自分で調べる。
一方、思想や価値観のように一つの正解が存在しないものについては、人に聞く。
現在も経営者との商談で知らないビジネス用語が出てくれば、その場で意味を尋ねたり、終わってから調べたりしている。
岩橋さんは、大学生活の中でも仕事や事業へ多くの時間を使ってきた。
その経験を本人は、
「大学の中では追い込んできた人生ではある」
と表現する。
ただ、苦しいことに耐えること自体を目的にしていたわけではない。
その先に、自分が望む「楽しい人生」がある。
その感覚が、次の選択へとつながっていった。
第3章|成果が出なくても、「やるしかない」
自分で事業を始めたからといって、すぐに成果が出たわけではなかった。
思うように契約につながらない時期もあった。
成果が出ない状態が続けば、「自分には向いていないのではないか」と考えても不思議ではない。
そこで、岩橋さんに尋ねた。
「心が折れなかったんですか?」
返ってきたのは、
「折れないですよ。でも、やるしかないから」
という言葉だった。
もともと「諦めが悪い」と自分でも話す。
では、なぜ続けられたのだろうか。
ここでも、出てきたのは「楽しさ」だった。
「楽しい人生を送りたいから」
事業を続けた先には、今まで会えなかった人と出会えるかもしれない。
自分が自由に選択できる幅も広がるかもしれない。
自分の知らなかった世界へ行けるかもしれない。
その先にある楽しさを想像できたからこそ、成果が出ない時間も諦めずに続けることができたという。
ただ、すべてを自分一人で解決できたわけではない。
当時を振り返り、岩橋さんは「抱え込みすぎた」と話す。
もっと早い段階で周囲に、
「今、きついんだよね」
と伝えてもよかった。
そして、ただ量をこなせば解決する、チャレンジすれば何とかなると考えるだけでなく、問題が起こることを想定したうえで解決策を考える必要もあった。
「あのときは、課題解決の策案がまだ甘かった」
現在から振り返れば、改善できた部分が見える。
自分で選択することは、何でも一人で抱えることとは違う。
必要なら人に頼る。
問題があれば原因を考える。
そして、次の方法を探す。
幼いころから持っていた「自分で責任を取る」という感覚が、事業を経験する中で少しずつ具体的な行動へと変わっていった。
第4章|どこで働くかより、そこで何をするか
現在、岩橋さんは株式会社ミトミトを経営している。
営業代行や採用支援などを通じて企業に関わりながら、新しい事業についても考え続けている。
事業案を考える際には、市場の可能性、自社の強み、競合との違い、模倣されにくさ、コスト回収や財務面など、複数の観点から検討するという。
「楽しそうだからやる」という感覚だけで事業を決めているわけではない。
市場に本当に課題があるのか。
自分たちが価値を提供できるのか。
事業として継続できるのか。
そうした現実的な条件も考えている。
その話を聞く中で、僕は一つ質問した。
「頭をフルに使うとき、考えやすい環境はありますか?」
僕自身、集中するためには、まず環境を整えることが大切だと思っていた。
静かな場所へ行く。
机を片づける。
集中できる状態をつくる。
ところが、岩橋さんから返ってきた言葉は、僕が予想していたものとは違った。
「環境で縛る・縛らないができない人間って弱いじゃないですか。やるやつはどこでもやるし」
起業したころから、場所にはあまりこだわってこなかったという。
カラオケの駐車場で打ち合わせをする。
公園で蚊に刺されながら話をする。
必要なら、その場所で仕事をする。
もちろん、誰もが同じ働き方をする必要があるという話ではない。
岩橋さん自身は、仕事を進めるうえで「場所が整うまで待つ」という選択をあまりしてこなかったということだ。
時間の使い方にも、その考えは表れている。
温泉へ行っていても、事業について考えることがある。
出かけるときも、身近なメンバーや経営者の先輩と一緒に行くことがある。
遊ぶことと仕事を完全に分けるよりも、その時間自体を楽しみながら、一歩でも事業を前へ進める。
「僕は結局、楽しくやるっていうことを念頭に置いてるんで。僕は仕事が楽しい」
会社の仲間と遊ぶことも楽しい。
仕事について話すことも楽しい。
だから、仕事とプライベートを完全に切り分ける必要を、現在はあまり感じていない。
一方で、「まだやるべきことはたくさんある」とも話す。
「楽しむ」という言葉だけを聞けば、無理をせず好きなことだけをする生き方にも聞こえる。
実際の岩橋さんは、成果についても強く意識している。
仕事では「効率」と「効果」を考える。
同じ時間を使うなら、どうすればより大きな成果につながるのか。
幼いころから勉強でも効率を考えることがあったという。
自分で選択した仕事だからこそ、結果にも向き合う。
そこに、現在の岩橋さんが考える「楽しむ」と「責任」の関係が見えてくる。
第5章|「楽しさ」を、自分でつくれる人でいる
インタビューの最後、岩橋さんに聞いた。
「あなたにとってIKIGAIは何ですか?」
答えは、
「楽しみ、楽しさですね」
だった。
取材の最初から最後まで、何度も出てきた言葉である。
幼少期は、友人と遊ぶことが楽しかった。
サッカーも、楽しいから現在まで続けている。
将来を考えたときには、「もっと楽しい働き方をしたい」と思った。
事業がうまくいかない時期にも、その先に待っている楽しさを想像して続けた。
現在は、自分で選んだ仕事そのものを楽しんでいる。
こうして振り返ると、岩橋さんの人生に「楽しむ」という価値観が何度も現れる。
ただ、その意味はずっと同じだったわけではない。
子どものころの楽しさは、自分が楽しいと思うことをすることに近かった。
成長するにつれて、そこに責任が加わった。
何かを選択するなら、自分で責任を持つ。
分からないことがあれば調べる。
必要なら人に頼る。
うまくいかなければ、原因を考える。
そして、環境が整うのを待つだけではなく、今いる場所でできることをする。
「楽しむ」は、受け身のものから、自分でつくっていくものへと少しずつ変わってきたように見える。
岩橋さんは現在、株式会社ミトミトの経営に取り組みながら、新たな事業の可能性を模索している。
これまでの経験を通じて培ってきた「楽しむ」という価値観は、事業に向き合う姿勢にも表れている。
今後、事業が拡大し、関わる人が増えていく中で、その価値観がどのように深まっていくのか。
岩橋さんの歩みは、これからも続いていく。
それでも、現時点でのIKIGAIを尋ねれば、答えは迷いなく「楽しさ」である。
楽しい場所が見つかるまで待つのではなく、自分で選ぶ。
選んだことに責任を持つ。
うまくいかないことがあっても、その先にある楽しさを考えながら進んでいく。
岩橋さんが大切にしてきた「楽しむ」という言葉には、そんな生き方が重なっている。
「楽しい人のところに、人は寄ってくる」
人生の満足度を上げるためにも、自分自身が楽しんでいることを大切にする。
誰かに人生を楽しくしてもらうのを待つのではなく、自分で選び、自分で動き、その結果にも向き合う。
岩橋綾士さんにとって「楽しむこと」は、人生の目的であると同時に、人生に向き合う姿勢でもあるのかもしれない。
この先、経営者として経験を重ねたとき、「楽しむ」という言葉がどのように深まっていくのか。
岩橋さん自身の歩みも、まだ途中である。
あとがき|「楽しい環境」を探すだけでいいのだろうか
今回、岩橋さんにインタビューをして、僕が一番驚いたのは、どこを切り取っても「楽しむ」という言葉が出てきたことだった。
幼少期の話を聞いても、サッカーの話を聞いても、仕事や起業について聞いても、最終的には「楽しい」という価値観につながっていく。
ここまで一つの価値観が人生のいろいろな部分に浸透している人に、僕はこれまであまり出会ったことがなかった。
取材前の僕にとって、「楽しむこと」はもっと単純なものだった。
友達と遊ぶ。
好きなことをする。
自分が嫌だと思うことはできるだけ避ける。
仕事について考えるときも、「楽しく働ける会社だったらいいな」と考えることがある。
だが今回、岩橋さんの話を聞いて、その「楽しむ」の意味が少し変わった。
特に心に残ったことが二つある。
一つ目が、
「環境で縛る・縛らないができない人間って弱い。やるやつはどこでもやる」
という話だ。
この言葉を聞いたとき、僕は少しドキッとした。
僕自身、何かを始めるときに、まず環境を整えようとすることがあるからだ。
集中できる場所を探したり、条件がそろってから始めようとしたりする。
もちろん、環境を整えること自体が悪いとは思わない。
ただ、「環境が整っていないからできない」と考えてしまえば、いつまでも環境を言い訳にすることもできる。
岩橋さんは、起業したころからカラオケの駐車場でも、公園でも打ち合わせをしていたと話していた。
「どこでやるか」より、「そこで自分が何をするか」を大切にしているように感じた。
僕はこれまで、環境から受ける影響をかなり大きく考えていたと思う。
大学、インターン、そしてこれからの就職。
「どんな環境に入れば成長できるだろう」
ということを考えてきた。
今回の話を聞いて、そこにもう一つ、
「その環境で、自分は何をするのか」
という視点が加わった。
どれだけ良い会社に入っても、そこにいるだけで成長できるわけではない。
逆に、自分にとって完璧な環境ではなくても、自分から動くことで得られるものがあるかもしれない。
二つ目に心に残ったのが、「楽しむことに責任を持つ」という考え方だ。
岩橋さんは幼いころからよく遊んでいた。
一方で、両親からは「何にでも挑戦するのはいいけれど、自分の責任でやる」という考えを伝えられてきたそうだ。
僕は今まで、「楽しむこと」と「責任を持つこと」をあまり一緒に考えたことがなかった。
楽しむことは自由。
責任は、やらなければならないもの。
どこか別々のものとして捉えていた気がする。
岩橋さんの場合、その二つがつながっている。
自分がやりたいからやる。
自分が楽しいと思うから選ぶ。
だからこそ、その結果についても自分で責任を持つ。
この考え方は、これから進路を選んでいく僕にも関係する話だと思った。
僕は今、銀行への就職も一つの選択肢として考えている。
これまでは、「自分に合った会社はどこだろう」「どんな環境なら働きやすいだろう」と、就職先に求めるものを考えることが多くあった。
それも大切だと思う。
ただ今回のインタビューを終えて、
「楽しい環境に入れば、自分は楽しく働ける」
と考えるだけでは足りないのかもしれないと思うようになった。
銀行に入ったとしても、別の会社に入ったとしても、自分が選んだ道なら、その場所でどう楽しむかを考えるのは自分だ。
逆に、自分で考えて行動したうえで、それでも違うと思うのであれば、別の環境を選び直すこともできる。
岩橋さんが起業したからといって、僕も起業したいと思ったわけではない。
会社員より経営者のほうが楽しい、と結論づけたわけでもない。
むしろ今回僕の中に生まれたのは、もっと手前にある問いだった。
「僕は、楽しい環境を探しているだけなのか。それとも、自分で仕事を楽しめる人になろうとしているのか」
今の僕には、まだ答えがない。
仕事を始めたら、楽しいことばかりではないと思う。
自分では変えられない環境もあるはずだ。
責任が大きくなれば、「楽しむ」だけでは乗り越えられないことも出てくるかもしれない。
だからこそ、これからいろいろな経営者の話を聞いてみたいと思う。
楽しいときだけではなく、仕事が楽しくないときにどう向き合っているのか。
自分で変えられないことが起きたとき、何を大切にしているのか。
そして、自分が選んだ仕事にどう責任を持っているのか。
岩橋さんへのインタビューを通して、僕の中で「楽しむ」という言葉の意味が少し変わった。
ただ楽しい場所を見つけることから、
自分で選び、その選択に責任を持ちながら、楽しめる自分でいることへ。
これから就職や将来について考えていく中で、僕自身がどちらを選べる人になるのか。
その答えを探すためにも、また次の経営者の方の人生を聞いてみたいと思う。
IKIGAIの芽
藤瀬亮介









