• ホーム
  • IKIGAIコラム
  • やりたいことがコロコロ変わる人へ|続けるか、変えるかを決める5つの問い

やりたいことがコロコロ変わる人へ|続けるか、変えるかを決める5つの問い

やりたいことがコロコロ変わる。少し前までは、あの仕事をしたかった。ところが今は、別のことに心が動いている。調べるたびに新しい道が魅力的に見え、その一方で「また変わったら、何も身につかないのではないか」と不安になる。

やりたいことがコロコロ変わる時、必要なのは、変わらない夢を無理につくることではない。「何に引かれたのか」「何が合わなかったのか」「次は何を確かめるのか」を分けることである。変化の理由を確かめずに選び直すことと、経験を踏まえて進む方向を変えることは、同じではない。

IKIGAI JAPANは、一人ひとりの人生とIKIGAIを本人に直接聞き、110名のインタビューを公開している(2026年9月18日時点)。本記事では、その蓄積から仕事や大切にするものの変化が語られた3名の記録を読み直した。

そこから考えたいのは、「職業が変わること」と「自分の軸がなくなること」は必ずしも同じではなく、反対に、大切にするもの自体が変わる人生もある、ということである。

続けるか、変えるか。答えを急ぐ前に、まずは変化の中身を見ていこう。

やりたいことがコロコロ変わる時、何が変わっているのか

1.やりたい仕事は変わっても、求める経験はつながっている

職業名だけを並べると、一貫性がないように見えることがある。しかし、その仕事で何をしたかったのかまで掘り下げると、別のつながりが見つかる場合がある。

たとえば、業界への関心と、「何もないところから事業をつくりたい」という関心は異なる。前者が変わっても、後者を実現できる仕事なら、方向転換は必ずしも振り出しに戻ることを意味しない。

これは、編集部が丸石大仁氏のインタビューを読み直して着目した点である。当初はスポーツ領域に関心があったが、入社後に予定していた事業が終了し、人材紹介の立ち上げに関わった。その選択の背景には、起業に向けてゼロから事業をつくる経験を積みたいという考えがあった。

興味のある業界が変わり、「これまでの選択は間違いだったのか」と感じる方は、株式会社Limo・丸石大仁氏のインタビューを補足として読んでほしい。仕事の分野と、その中で得たい経験を分けて考える手がかりになる。

自分の過去を振り返る時も、職業名ではなく動詞にしてみる。「教える」「つくる」「整える」「誰かの話を聞く」。異なる選択の間に、繰り返していた行動が見つかるかもしれない。

ただし、無理につながりをつくる必要はない。まだ共通点が見えないことも、今の正直な答えである。

2.経験を重ね、大切にしたいものが変わった

以前と同じ理由で頑張れなくなった時、意志が弱くなったと決めつける必要はない。以前の選択を支えていた価値観が、今の生活と合わなくなっている可能性もある。

昇進を目指していた人が、家族と過ごす時間を優先したくなる。自分の成果を伸ばすことに集中していた人が、蓄積した経験を誰かへ渡したくなる。これは単に職業を変えたいのではなく、働く目的を見直したいという変化である。

泉陽一氏は、かつての成果や昇進を重視した働き方と、現在の妻の幸せや他者への貢献を大切にする考えを語っている。その変化は、ある一日を境にすべてが入れ替わった、という単純なものではない。

以前の目標に心が動かなくなった方は、株式会社Kai・泉陽一氏のインタビューを補足として読んでほしい。昔の自分を否定せずに、現在の優先順位を考えるための記録である。

人生を理解するために、必ず「昔から本当はこれが好きだった」という物語へまとめる必要はない。変わった部分を認めることも、自分を知ることである。

3.やりたいことではなく、今の取り組み方が合わない

もう一つ分けたいのが、内容への関心と、その取り組み方への不満である。

人へ何かを伝える仕事は好きでも、急な依頼が重なる進め方はつらい。ものづくりへの関心はあるが、基礎の練習が難しく、手応えが得られない。この二つをどちらも「向いていない」と処理すると、次に何を変えるべきかが見えにくくなる。

作業そのもの、環境、身につける途中の難しさ。どこに引っかかっているのかで、確かめることは違う。担当や進め方を調整する余地があるのか。学び方や助けを借りる相手を変えられるのか。それとも、実際の作業を知った結果、関心が薄れたのか。

仕事への違和感を整理したい場合は、仕事にやりがいを感じないとき、転職の前に確かめたい3つのズレも参考になる。

「本当に好きなら、ずっと楽しい」とは限らない

やりたいことがコロコロ変わるたびに、新しい選択肢へ進む。その背景に「本当に好きなことなら、難しくても迷わず続けられるはずだ」という期待がないかは、一度確かめたい。

関心があることと、取り組むすべての時間が楽しいことは同じではない。初めての難しさだけを理由に判断すると、興味が深まる前に見切りをつけてしまう可能性がある。

難しさだけで、興味がないと決めない

この点を考える補助になるのが、O’Keefeらの研究である。2018年に発表された大学生を対象とする五つの研究では、第1研究に126人が参加した。興味はあらかじめ決まっていると考える傾向と、新しい領域への開放性などを調べ、一部の実験では興味についての考え方を操作した。

固定的に捉える条件では、新しく関心を持った内容が難しくなると、興味が弱まりやすいという結果も示された。研究本文:O’Keefeら、2018年

新しい分野への興味は育ちうるのか

さらに2023年の研究では、シンガポールの文系分野を志向する新入学生580人を対象に、興味は育ちうると伝える約30分のオンライン介入と、学習スキルに関する対照条件を無作為に割り当てた。

その後の学期を追った結果、もともと数学・科学を自分の領域と捉えにくかった学生では、介入群の必修数学・科学への興味が高かった。研究本文:O’Keefeら、2023年

いずれも主に大学生の学習上の興味を扱った研究であり、働く大人の転職やIKIGAIへの効果を直接確かめたものではない。「続ければ、どんな仕事でも好きになる」という結論にはできない。

それでも、最初から強い情熱がないことや、難しいと感じることだけで、選択を否定しないための補助線にはなる。

やりたいことがコロコロ変わる人が、選ぶ前に考えたい5つの問い

ここからの問いは、やりたいことがコロコロ変わる理由を整理するためのものであり、適職を診断するものではない。迷いを分け、次に確かめることを具体化するために編集部が整理したものである。五つすべてへ一度に答えなくてよい。

問い1.次にやりたいのは「肩書き」か、「実際の作業」か

「カフェを開きたい」と思った時、心が動くのは、自分の店を持つ姿なのか。飲み物を用意すること、人と話すこと、場所を整えることなのか。仕入れや片づけまで含めた一日を想像できているだろうか。

職業名の下に「実際にやってみたい作業」を三つ書くと、憧れと、確かめたい活動を分けやすくなる。

目的は、憧れを否定することではない。知らない作業は「不明」として残し、経験者へ聞いたり、体験できる場を調べたりする対象にする。ここに挙げたカフェの例は説明用であり、取材対象者の体験ではない。

問い2.前の選択をした時から、新しく何を知ったのか

やりたいことがコロコロ変わる理由を、「飽きた」の一言から、もう少し具体的にする。

実際に経験して、想像と違う部分が分かったのか。新しい分野に触れたのか。生活の条件が変わったのか。それとも、まだ中身を知らない次の選択肢が魅力的に見えているのか。

新しく得た情報を書けば、経験に基づく見直しなのか、これから検証が必要な期待なのかを整理できる。

注意したいのは、「やめるに足る立派な理由」を探さないことである。継続を正当化するためにも、変更を正当化するためにも使わず、起きた事実と自分の感想を分けて書く。

問い3.次の選択でも大切にしたいことは何か

仕事内容が変わっても残したいことを、一つだけ挙げる。「直接ありがとうと言われること」「自分で工夫できること」「家族との夕食を守ること」など、仕事の意味と生活の条件のどちらでもよい。

これがあると、新しい選択肢を、今より魅力的に見えるかだけでなく、望む日常に近づくかでも比較できる。

以前と違う答えでも構わない。取材記録から考えられるのは、軸が続く人生も、優先順位が変わる人生もあるということである。一生変わらない信念を提出するつもりで考えなくてよい。

問い4.変えたいのは、内容・環境・学び方のどれか

現在の不満を一つ挙げ、「その条件だけが変わっても、やめたいだろうか」と考える。

たとえば、相談できる相手がいる、作業時間が確保される、基礎を教わる機会がある。それでも関心が戻らないと思うのか。それとも、まだ試してみたいのか。

この問いは、すべてを手放す前に、部分的な変更で確かめられることを探すためのものである。ただし、調整できない環境を本人の工夫不足にしてはならない。強い心身の不調や安全上の問題がある場合は、このワークよりも休養や適切な相談を優先してほしい。

問い5.次の一歩で、何が分かれば十分か

「向いているかを確かめる」だけでは、試した後も判断しにくい。もう少し小さな問いにする。

たとえば「人に教える仕事に関心があるので、知人一人へ得意なことを説明し、準備と説明のどちらに関心が残るかを確かめる」。相手の了解を得て、無理のない時間で行う。

目的は、短時間で適職を決めることではない。次の調査や体験に進むための情報を一つ得ることである。時間と費用の上限を決め、終わった後に「もう一度やりたい部分」「負担だった部分」「まだ分からない部分」を残す。

一度うまくできたから向いている、一度疲れたから向いていない、と結論づけない。技術の未熟さ、当日の条件、活動への関心を分けて振り返ることが重要である。

やりたいことがコロコロ変わる時も、すべてを一度に変えなくてよい

次の方向が気になったからといって、現在の仕事や生活をすぐに手放す必要はない。可能な範囲で、現在の足場を残しながら新しい活動を知る方法もある。

ここで取材記録から参考になるのは、変化の大きさだけでなく、その順番である。

美林直樹氏は、飲食店を経営しながら新しい分野を学び始め、その後に活動を始めてから、長く営んだ店を閉じている。この経過から言えるのは、すべてをやめた後で次を探したわけではない、ということである。同じ順番を踏めば成功する、という証明ではない。

今まで積み上げたものを手放す不安が大きい方は、立腰整体 善九郎・美林直樹氏のインタビューを補足として読んでほしい。本記事では施術の効果ではなく、学び始める時期と仕事を変える時期を分けた経過に着目している。

自分の次の一歩も、大きな決断ではなく、以下の四行から始められる。

  • 次に気になっていること:
  • 実際に確かめたい作業や条件:
  • 試す時間・費用の上限と、振り返る日:
  • 今の生活で守っておきたいこと:

小さな実践が難しい場合は、まず経験者から実際の一日の流れを聞くだけでもよい。その段階で分からなかったことが、次の問いになる。

本記事の取材資料と分析の範囲

IKIGAI JAPANの公開インタビューは110名分である(2026年9月18日時点)。本記事は、そのうち丸石大仁氏、泉陽一氏、美林直樹氏の公開記事を読み直し、選択の背景、価値観の変化、行動の順序を編集部が整理したものである。

110名全員について「やりたいことが変わった割合」を調べた統計ではない。掲載者には経営者・専門家が多く、本人が振り返って語った記録でもあるため、日本人全体の傾向や、特定の選択による効果は示せない。以前の106人時点のタグ集計も、本記事の110名の結果として使用していない。

本文の五つの問いは、取材記録と研究を踏まえた編集部の提案であり、効果が検証された診断尺度ではない。研究は2018年と2023年の原論文を参照し、学習上の興味と人生・職業の選択を区別した。

やりたいことがコロコロ変わる中で、分かったことを持って進む

やりたいことがコロコロ変わるからといって、過去の自分をすべて否定しなくてよい。反対に、変化を無条件に才能と呼び、確かめないまま次へ進む必要もない。

大切なのは、一度決めたことを守り抜くことだけではない。経験して何が分かったのか、今は何を大切にしたいのかを、次の選択へ持っていくことである。

今日、一つだけ書くなら、「次は何になるか」ではなく、「次に何を確かめたいか」でよい。

IKIGAIは、一生変わらない職業名でなければならないものではない。変わる関心と、残る願い。その両方を見つめながら、自分が大切にして生きたいことを具体的にしていく。その過程にも、意味がある。

IKIGAIコネクター
尾﨑弘師

WRITER PROFILE

尾﨑弘師 (おざき ひろし)

IKIGAIコネクター/IKIGAI JAPAN 主宰/株式会社ミトミト 代表取締役

これまで延べ1,500人以上に「生きがい(IKIGAI)」をヒアリングし、経営者を中心に100本以上の長編インタビュー記事を執筆。経営者インタビューメディア「IKIGAI JAPAN」を運営し、人生・価値観・哲学・仕事への想いを取材・言語化し、次世代へ残す活動を続けている。

掲げるのは、「その人の人生は、誰にもコピーできない。だからこそ、残すべき価値がある。」という考え方。AIによってコンテンツが大量生産できる時代だからこそ、その人にしかない経験や思想、技術、物語こそが差別化資産になると考えている。

さらに、発掘したIKIGAIをブランド・採用・集客・営業へつなげ、経済の力へ変える「IKIGAIマーケティング」を実践。インタビューによる価値の発掘・言語化を起点に、Webサイト・漫画LP・アニメーションなどのクリエイティブ制作から、広告運用・営業設計まで一気通貫で支援し、「その人だから選ばれる」マーケティングの仕組みを構築している。

他のコラムを見る