2026/9/12
仕事以外の生きがいはどう見つける?106人の記録から考える3つの入口
仕事以外の生きがいがない。休日はあるのに、何をすれば満たされるのか分からない。仕事を辞めたいわけではないが、このまま仕事だけで人生が過ぎていくことに、少し不安がある。
その時、探すものを「一生続けられる趣味」や「夢中になれる大きな目標」に限る必要はない。まずは、評価されなくても気になること、無理をせず関われる相手、来週も続けられる時間を一つずつ確かめることである。仕事以外の生きがいは、生活の中で自分が大切にしたいものへ時間を使うことから、育てていけるのではないか。
IKIGAI JAPANは、一人ひとりの人生と、その人が大切にするIKIGAIを本人に直接聞き、記事として記録している。本稿では、IKIGAI JAPAN編集部が2026年9月2日時点の公開106人の記事を整理したデータを再集計し、関連する本人インタビューを読み直した。そこから見えるのは、仕事の肩書きだけでは捉えきれない、関心や関係の広がりである。
ここでは、その記録と研究を手掛かりに、仕事を続けながら自分の生活へ取り戻せる三つの入口を考える。
仕事以外の生きがいを、もう一つの仕事にしない
仕事で成果を出すことに慣れていると、休日にも同じ物差しを持ち込みやすい。写真を始めたら上手くならなければならない。読書をするなら仕事に役立てたい。好きなことができたら、副業として収益にしたい。
上達や収益を目指すこと自体は悪くない。ただ、それを始める条件にすると、「役に立つか分からないけれど気になる」という関心が、試す前に消えてしまう。
散歩の途中で同じ木の変化を見る。好きな曲を聴き直す。料理を一品つくる。誰にも報告しなくても、終わった後に「この時間があってよかった」と思えるなら、その反応は拾ってよい。実績として説明できるかと、自分にとって大切かは、別の問いである。
仕事以外の生きがいを探す時には、最初に「何を達成するか」を決めるより、「どんな時間を残したいか」と聞き直してみてほしい。
106人の記録で、仕事の肩書きからこぼれるもの
分析対象106人の価値観タグを再集計すると、「家族」は25人、「子ども」は24人、「創造」は23人、「仲間・友」は21人、「健康・命」は20人に付いていた。
これは本人全員に同じ選択肢を提示して回答してもらったアンケートではない。公開記事をもとに編集部が付けた複数選択タグの件数であり、記録に表れた価値観の一部である。「仕事以外に生きがいがある人の割合」を示す数字でもない。
それでも、経営者や専門家が中心のインタビューに、家族や仲間、創造、命に関わる価値観が記録されていることは、問いを広げる手掛かりになる。職業を聞いただけでは、その人がなぜ今日を大切にするのかまでは分からないのである。
編集部がここから考えるのは、「仕事か私生活か」を一つ選ぶ必要はないということだ。仕事を通じて大切にしている関心が、地域の活動や身近な人との時間にもつながる場合がある。反対に、仕事から離れたところに、まったく違う自分の居場所を持ってもよい。
仕事以外の生きがいを育てる3つの入口
1.得意なことより、もう一度触れたいこと
最初の入口は、才能の判定を後回しにすることである。楽しめるかどうかがまだ分からない段階で、「向いているか」「今から始めて意味があるか」と考えると、選択肢は狭くなる。
代わりに、最近つい調べたもの、昔は好きだったが中断したもの、誰かと話す時に少し言葉が増える話題を一つ思い出す。大事なのは、何年続くかを予測することではなく、次の一回を試したいかである。
取材記録には、家にあったレコードを持ち寄る活動が、地域で音楽を楽しむ場へ広がっていった歩みがある。ここから参考にしたいのは、後に大きくなった規模より、すでに手元にある関心を誰かと試した出発点である。
新しい才能を見つけなければ始められないと感じる方は、地域との関わりから音楽の場を育てた柳澤宏之さんのインタビューを補足として読んでほしい。頼まれた役割と身近な関心が、どう活動につながったかをたどれる。
2.役に立つ前に、自然にいられる関係
二つ目は、どんな相手と関わるかである。人と会う予定を増やすだけでは、自分の時間が豊かになるとは限らない。仕事と同じように気を張り続けたり、期待に応えようと無理をしたりすれば、休日にも疲れが積み重なる。
考えたいのは、何かを提供できる自分だけでなく、うまく話せない日や、手伝えない日にも関われる相手がいるかである。一緒に何かをする関係でも、体験を話せる関係でもよい。
この点を補足するのが、KonoとWalkerによる2020年の研究である。日本の大学生27人への写真を用いたインタビューと、672人のオンライン調査を組み合わせ、生きがいと対人関係を検討している。自分らしくいられ、相手から大切にされていると感じる関係や、体験を共有することとの関連が示された。ただし大学生を対象とした研究であり、働く世代全体への効果や因果関係を証明したものではない。研究の方法と結果を読む(Kono & Walker, 2020)。
人と関わることが苦手なら、大人数の集まりを選ぶ必要はない。一人と短く話す、好きな作品について感想を交換するなど、自分に合う距離から考えられる。一人で過ごす喜びにも価値があり、社交的になることが生きがいの条件ではない。
3.気持ちの強さより、続けられる条件
三つ目は、時間と負担を具体的にすることである。「本当に好きなら続くはず」と考えると、続かなかった理由を自分の情熱不足にしてしまう。しかし、移動に時間がかかる、費用が重い、頼まれごとを断れないといった条件でも、活動は続けにくくなる。
地域の音楽活動の取材でも、次の担い手に引き継ぐには、現在の担い手と同じ無償の負担を求める形を見直す必要があると語られていた。楽しさがあることと、続けられる仕組みがあることは、同じではない。
仕事以外の生きがいも、「毎週必ず」ではなく「月一回ならできる」、「運営を引き受ける」ではなく「まず一時間だけ参加する」と調整してよい。やめる選択肢があることも、安心して始められる条件になる。
また、誰かを大切にしたい気持ちは、特定の職業だけに閉じ込めなくてよい。仕事の先にある家族や地域との関わりを考えたい方は、誰のために力を使うのかを問い続ける迫優華さんのインタビューを読んでほしい。仕事への思いと、身近な人やこれから関わりたい相手への思いを、重ねて考えられる。
仕事以外の生きがいがない時に試す、7日間の小さな記録
ここまでの取材を日常へつなぐため、編集部から一つの試し方を提案する。七日間で生きがいを見つける方法ではない。次に残したい時間を、一回の経験から判断するための記録である。研究で効果を検証したプログラムでもない。
- 1日目:残したい場面を一つ書く。「楽しかったこと」が出なければ、「少し気が楽だった時」でもよい。いつ、どこで、何をしていたかを書けば、漠然とした趣味探しを具体的な場面へ変えられる。
- 2〜3日目:小さく試す予定を決める。本を数ページ読む、短い散歩をする、気になる活動を一度見学するなど、時間と費用の上限を先に決める。買い物や長期契約を始める条件にしない。
- 4〜6日目:一度だけ行い、反応を書く。「もう一度やりたいか」「誰かと分かち合いたいか」「何が負担だったか」の三点を残す。上手くできたかではなく、自分にとって残したい部分を見つけるためである。
- 7日目:続ける、形を変える、いったんやめるを選ぶ。楽しかったが疲れたなら短くする。内容は好きでも集まりが合わなければ、一人で試す。やめる判断も、自分に合う条件を知った結果である。
たとえば「写真を趣味にする」と決める前に、帰り道で気になった景色を一枚撮ってみる。撮るのは楽しいが投稿は負担なら、公開しなくてよい。写真より歩く時間がよかったなら、残すのは散歩でよい。これは説明のための例であり、取材相手の体験談ではない。
何を試すかさえ浮かばない時は、やりたいことがわからない時に考えたい5つの問いで、自分の関心を言葉にするところから始められる。
何も楽しめない時は、生きがい探しを急がない
新しい予定を入れる余力がない時まで、行動を増やす必要はない。休む時間や生活の負担を見直すことも、仕事以外の生きがいを考える土台になる。
Okuzonoらの2022年の縦断研究は、日本の65歳以上の二つの分析集団(6,441人、8,041人)について、2013年の生きがいと2016年の健康・幸福感などとの関連を調べた。生きがいと良好な状態との関連に加え、先行する心理状態から後の生きがいへの関連も示されている。生きがいを持てば健康になるという一方向の説明では捉えきれない。高齢者の観察研究であり、働く世代への介入効果を示すものでもない。研究の方法と限界を読む(Okuzonoほか, 2022)。
睡眠や食事、日常生活に支障が出るほどつらい状態が続く場合には、生きがいがないせいだと結論づけず、医療機関などへ相談してほしい。仕事の負担や環境に問題があるなら、趣味で埋め合わせることだけを解決策にしない。
仕事そのものとのズレを整理したい方には、仕事にやりがいを感じない時に確かめたい3つのズレが、その問題を考える補足になる。
仕事以外の生きがいについて、よくある疑問
趣味と生きがいは、何が違うのか
この記事では、趣味を「行う活動」、生きがいを「その時間や関係を、自分が大切にして生きたいと感じること」として区別している。趣味が生きがいになる場合もあるが、家族との時間や日常の小さな役割のように、趣味と呼ばないものにも目を向けられる。
仕事以外の生きがいは、一つに決めるべきか
一つに絞る必要はない。気になること、落ち着ける時間、会いたい相手が別々でもよい。今の生活で大切にしたいものを選び直していけばよい。
忙しくて新しいことを始められない場合はどうするか
活動を足す前に、すでにある時間を確かめる。食事をゆっくり味わう、移動中に好きな音楽を聴くなど、小さな場面から始められる。ただし休息を削ってまで実践する必要はない。
分析対象と本稿の位置づけ
価値観タグの集計対象は、2026年9月2日に取得したIKIGAI JAPANの公開インタビュー106件である。2026年9月12日に保存データを再集計し、本稿で紹介した二つのインタビューは公開本文を再確認した。106件は固定した分析対象であり、その後の新規掲載を含む現在の全記事件数を示すものではない。
タグは編集部による複数選択の分類で、一人に複数付く。タグがないことは、その価値観を持たないことを意味しない。経営者・専門家が中心の掲載者であり、日本人全体や会社員全体を代表する統計ではない。本稿の三つの入口と七日間の記録は、取材と研究を踏まえた編集部の提案であり、106人全員への共通質問や実践試験から導いた効果ではない。
仕事以外の生きがいは、来週も残したい時間から始まる
仕事に真剣であることと、仕事の外にも大切なものを持つことは両立する。会社での評価が思うようにいかない日にも、自分の生活には気になることや、つながっていたい相手があってよい。
立派な趣味を決めるより、少し心が動いた場面を一つ残す。その時間をもう一度つくり、負担があれば形を変える。取材記録から参考にできるのは、完成した生きがいの名前だけではなく、関心が人との関わりに触れ、続けられる形へ変わっていく過程である。
来週も、少しだけ残したい時間は何だろうか。その問いに答えられる小さな場面から、仕事以外の生きがいを考えてみてほしい。
IKIGAIコネクター
尾﨑弘師
WRITER PROFILE
尾﨑弘師 (おざき ひろし)
IKIGAIコネクター/IKIGAI JAPAN 主宰/株式会社ミトミト 代表取締役
これまで延べ1,500人以上に「生きがい(IKIGAI)」をヒアリングし、経営者を中心に100本以上の長編インタビュー記事を執筆。経営者インタビューメディア「IKIGAI JAPAN」を運営し、人生・価値観・哲学・仕事への想いを取材・言語化し、次世代へ残す活動を続けている。
掲げるのは、「その人の人生は、誰にもコピーできない。だからこそ、残すべき価値がある。」という考え方。AIによってコンテンツが大量生産できる時代だからこそ、その人にしかない経験や思想、技術、物語こそが差別化資産になると考えている。
さらに、発掘したIKIGAIをブランド・採用・集客・営業へつなげ、経済の力へ変える「IKIGAIマーケティング」を実践。インタビューによる価値の発掘・言語化を起点に、Webサイト・漫画LP・アニメーションなどのクリエイティブ制作から、広告運用・営業設計まで一気通貫で支援し、「その人だから選ばれる」マーケティングの仕組みを構築している。