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夢を諦めたあと、すぐ次の夢を見つけなくていい|2人の人生から考える

夢を諦めたあと、何をすればいいのか分からない。

毎日考えていたこと。時間をかけて練習したこと。人に話す時、自分を説明する言葉になっていたもの。
それがなくなると、予定だけでなく、自分の輪郭まで失ったように感じることがある。

「次の目標を見つけよう」と言われても、すぐには心が動かない。新しい夢を探すことが、前の夢を大切にしてきた自分への裏切りのように感じるかもしれない。

今、答えがないことを、人生の失敗まで広げなくていい。

IKIGAI JAPANの公開インタビューには、長く打ち込んだサッカーを手放した2人の記録がある。株式会社FULL HOUSEの加瀬浩之さんと、ASRIUMの大須賀琢真さんだ。二人とも、夢のあとに空白があった。その空白の中で、考えたり、別の世界に触れたりしながら、次の選択を重ねている。

二人の人生を、立ち直る速さの見本にしたいわけではない。何者かになれない時間にも、その人の物語が続いていたことを、ここでは見つめたい。

夢を手放すと、自分までなくなったように感じる

加瀬さんは、世界で活躍するサッカー選手を目指していた。高校2年生で経験したフランス遠征では、同世代との力の差を知った。帰国した頃に大怪我をし、半年間、サッカーができなくなった。

サッカーがなくなったら、自分には何ができるのか。本人が当時出した答えは「何もない」だった。

その後、大学進学に向けて浪人する。サッカー選手になる夢を断念し、高校生という所属も離れ、大学生にはまだなっていない。一年を振り返る言葉は、決して明るいだけのものではなかった。

「本当に何者でもない一年間だったんです。自分を証明するものが何もない。その期間が、一番辛かったです」

大須賀さんも、幼い頃からサッカーを続け、プロを目指していた。大学1年生の夏、競技を辞めると決めた時には、長く支えてくれた家族への申し訳なさもあったという。

「『大須賀=サッカー』というものが自分の中にあって、そのイコールがなくなった。何をすればいいんだ、という感覚でした」

夢が一つ消えた、というだけでは説明できない。その夢を追う自分が、長く自分自身だった。だから、すぐに別の目標を置くだけでは埋まらないものがあるのだと思う。

今までの努力を、早く「次に役立つ経験」へ変換しなくてもいい。悔しかったことも、まだ手放せない気持ちも、今の自分の正直な反応として残していい。

夢を諦めたあと、二人が向かった先は同じではなかった

加瀬さんにとって、身体が止まった半年間は、自分のこれからを考え続けた時間でもあった。

「物理的には止まっているけど、思考自体はずっと進めるし、突き詰めることができる。この時間を、良い側面から見ようと考えていました」

やがて、自分の頭で考え、事業を起こせる力を身につけたいと思うようになる。すぐに事業の内容が決まったわけではない。大学へ進み、ビジネスの現場に触れ、仲間に出会い、仕事を重ねる。選択は、一度に完成していなかった。

今、加瀬さんが語るIKIGAIは、自分と出会えてよかったと思う人を増やすことだ。サッカー選手になることと、誰かの次の一歩を支えることは、同じ職業ではない。それでも、その間にある時間を含めて、一人の人生になっている。

加瀬浩之さんのインタビューを読む――夢を手放した先で、誰かの一歩を支えるまで

大須賀さんは、サッカーを辞めたあと、熱中できるものを探して勉強へ向かった。その中で、大学の授業で隣に座ったフィリピン人の学生との会話から、初めて海外へ行くことになった。

本人が最初の渡航を「放浪に近かった」と振り返るように、完成した計画があったわけではない。現地の人との交流を通じて、幸せを測る物差しが自分の知っているものだけではないと感じた。その経験は、本人にとって、挑戦の意味を見直すきっかけになった。

結果をつかむために耐えることから、知らない世界を知ることへ。挑戦という言葉に重なる感覚が、少しずつ変わっていった。

今は営業、採用、人事などの経験を使い、自分の挑戦が誰かの一歩につながることを大切にしている。

大須賀琢真さんのインタビューを読む――サッカーという夢を手放した青年の、その後

同じ競技の夢を手放しても、その後の道筋は違う。二人の経験から「考えれば立ち直れる」「海外へ行けば変われる」という方法を取り出すより、答えが定まる前にも、考える時間や新しい出会いがあったことを受け取りたい。

次の夢より先に、まだ残っている願いを聞いてみる

夢の形と、その中で求めていたものを、少しだけ分けてみる。

選手になりたかった。その中で、何に心が動いていたのだろう。
上達すること。仲間と何かをつくること。知らない世界へ行くこと。誰かに喜んでもらうこと。

これは、二人に共通していた答えの一覧ではない。自分の経験を振り返るための、編集部からの問いかけである。

全部が残っている必要も、共通点を見つける必要もない。「今は何も分からない」が答えでもいい。ただ、一つの職業になれなかったことと、これから大切にしたいものが何もないことは、分けて考えられる。

今日、少し余力があるなら、こう尋ねてみてほしい。

「あの夢の中で、自分はどんな時間を生きたかったのだろう」

答えが一つ浮かんでも、すぐ仕事にしなくていい。話を聞きたい人がいれば、話を聞く。気になる活動があれば、今の生活を守れる範囲で、その中身を知る。次の夢の名前より、次に知りたいことが見つかるだけでもいい。

まだ関心を言葉にできない時は、やりたいことがわからない時の5つの問いも、考える入口になる。

叶わなかった夢も、人生から消さなくていい

二人の今があるからといって、夢を諦めた時のつらさがなくなるわけではない。つらい出来事が必要だったと、誰かが決めることもできない。

それでも、その後の選択によって、過去とのつながり方が変わる人生はある。

加瀬さんも、大須賀さんも、最初の夢と同じ場所には立っていない。かつて打ち込んだ自分を含めて、今の仕事や、人との関係をつくっている。

夢を諦めたあとに残るものは、すぐには見えないのかもしれない。だからこそ、次の目標を持てない今の自分まで、否定しなくていい。

夢の名前がなくなっても、あなたの物語まで終わったわけではない。

IKIGAI JAPAN編集部

取材資料:IKIGAI JAPANに公開された加瀬浩之さん、大須賀琢真さんのインタビュー本文を、2026年10月13日に読み直しました。本人が振り返って語った2人の記録と、編集部の解釈を区別して紹介しています。夢を諦めた人全体を対象とする調査や、特定の方法の効果を検証した記事ではありません。

WRITER PROFILE

尾﨑弘師 (おざき ひろし)

IKIGAIコネクター/IKIGAI JAPAN 主宰/株式会社ミトミト 代表取締役

これまで延べ1,500人以上に「生きがい(IKIGAI)」をヒアリングし、経営者を中心に100本以上の長編インタビュー記事を執筆。経営者インタビューメディア「IKIGAI JAPAN」を運営し、人生・価値観・哲学・仕事への想いを取材・言語化し、次世代へ残す活動を続けている。

掲げるのは、「その人の人生は、誰にもコピーできない。だからこそ、残すべき価値がある。」という考え方。AIによってコンテンツが大量生産できる時代だからこそ、その人にしかない経験や思想、技術、物語こそが差別化資産になると考えている。

さらに、発掘したIKIGAIをブランド・採用・集客・営業へつなげ、経済の力へ変える「IKIGAIマーケティング」を実践。インタビューによる価値の発掘・言語化を起点に、Webサイト・漫画LP・アニメーションなどのクリエイティブ制作から、広告運用・営業設計まで一気通貫で支援し、「その人だから選ばれる」マーケティングの仕組みを構築している。

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